- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
大腸内視鏡診断に関する書籍はこれまでにも数多く出版されており,その中には私自身が監修したものもある.多田正大先生らが著わされた本書はこれらの類書とは一線を画する大腸内視鏡診断の分野におけるバイブルといっても過言ではない.本書は評判が高かった7年前の初版本から改版されたものであるが,基本的な執筆方針は保ちつつも最新の消化器診断学,病理学,検査機器の進歩に基づいて各項目をリファインした結果,初版より100頁以上ボリュームが増加して下部消化管内視鏡診断に必要不可欠な内容がこの一冊に網羅されている.初版に掲載された提示症例の内視鏡写真も素晴らしいものであったが,今回ほとんどの項目で症例・内視鏡写真を新たに選ばれて,「眺めるだけでも感動する」ような美麗な内容の本に仕上がっている.
本書の根幹を成すこれら多数の症例,精選された内視鏡写真を執筆者らはいかにして集積されたのであろうか.私が類書を企画した際に,その構成とともに最も頭を悩ましたのがこの点であった.ある項目の記述を例示する症例を,と思っても読者にわかりやすくかつクオリティの高い内視鏡写真がなかなか無いのである.聞くところによると本書は大阪で定期的に開催されている「大腸疾患研究会」の例会で検討された膨大な症例が基礎となっているということである.私は「大腸疾患研究会」なるものの存在を知らなかったが,多田正大先生らが昭和49年(私は医者になってまだ2年目である)に設立し,年に5回,世話人をはじめとする施設の先生方が大腸の症例を持ち寄って熱いディスカッションを交わすという歴史あるかつレベルの高い研究会で,いわば東京で開催されている「早期胃癌研究会」の関西地域版,大腸特化版とでもいうものであろうか.「胃と腸」誌の素晴らしい内容が「早期胃癌研究会」で検討された膨大な症例に裏打ちされたものであるように,「大腸疾患研究会」でのディスカッションの熱さも予想されよう.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.