書評
大川清孝,清水誠治(編)中村志郎,井谷智尚,青木哲哉(編集協力)「感染性腸炎A to Z」
松井 敏幸
1
1福岡大学筑紫病院消化器科
pp.1596
発行日 2008年11月20日
Published Date 2008/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102380
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『感染性腸炎A to Z』は,大川清孝先生,清水誠治先生の編集による感染性腸炎のすべてを取り上げた著作である.両先生は,数多くの腸疾患を長年にわたり診療し,その中の問題症例を大阪の研究会で取り上げ,取りまとめてきた.関西の議論好きの風土は研究会にも持ち込まれ,ときに議論があまりに長く,紛糾することがある.しかし,饒舌に知識を競い疑問をぶつけ合うも,意外と討論者同士は仲が良い.そうした風土を受け継いで,本書は長年の構想と多数例の症例検討の重厚な積み重ねの結果,生まれたものである.多くの著者が苦労して得た珠玉の症例を,新たに設けた定期的な検討会に持ち寄り編集したものである.
本書は,感染性腸炎のすべてを,内視鏡所見を中心に据えてまとめたものである.考えてみると,感染性腸炎に関する多くの記載はすでに論文報告として成立しているはずである.しかし,それらの報告を参照しても感染性腸炎の内視鏡診断はvariationが多いためか,どうも記載が不十分との印象があった.例えば,疾患範疇は異なるが,潰瘍性大腸炎の内視鏡分類に関する記載は直達鏡の時代に作成されたもので,今見ても記載が曖昧かつ不正確である.現代の高画素内視鏡には即さないものが多いのであるが,これを修正することは大変難しい.同様に,感染性腸炎に関する内視鏡診断も内視鏡機器あるいは挿入法の進歩に伴い改善されることが望ましい.そうした必要性に応じて生まれたのが本書であろう.
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