カラーグラフ 外科手術における新しいテクニック―new art in surgery・19
生体肝移植における静脈再建術
菅原 寧彦
1
,
國土 典宏
1
,
幕内 雅敏
2
Yasuhiko SUGAWARA
1
1東京大学大学院医学系研究科人工臓器・移植外科
2日本赤十字社医療センター
pp.1321-1331
発行日 2008年10月20日
Published Date 2008/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102281
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はじめに
わが国では脳死肝移植が一般的医療としては定着しておらず,生体部分肝移植が盛んに施行されている現状が継続している.生体肝移植に関しては日本肝移植研究会の全国集計によると,2005年末までに3,218例が行われた1).その一方,脳死肝移植は臓器移植法施行以降は40例あまりが行われたにすぎない2).生体肝移植は,はじめての小児成功例が1989年に施行され3),成人症例は世界に先駆けて1993年に信州大学で行われている4).生体部分肝移植の最初の施行から現在まで約20年が経過しており,その歴史のなかで様々な技術面での進展があったと思われる.
なかでも肝静脈再建は各血管再建のなかでも事実上やり直しのきかない,おそらく最も重要な再建である.なぜならば,肝静脈狭窄の有無は門脈や動脈の再建のあとに気づくことが多いが,動門脈再建後の静脈再建の修正は容易ではないからである.早期の静脈狭窄はグラフトロスに直結するので,広い口径が確保できる再建方法を工夫する必要がある.さらに,術後にグラフトが再生することを考慮し,肥大しても狭窄しにくい吻合を心がけなくてはいけない.
本稿では,生体部分肝移植でのレシピエント静脈再建術の工夫・進歩について概説する.
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