外科診療に潜むピットフォール―トラブル回避のためのリスクマネジメント講座・4
腰椎麻酔による膀胱直腸障害―もうマーカイン®を使ってますか?
山本 貴章
1
Takaaki YAMAMOTO
1
1東京海上日動メディカルサービス株式会社
pp.957-960
発行日 2008年7月20日
Published Date 2008/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102192
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外科医にとってアッペ,ヘモ,ヘルニアと言えば手術の基礎となる代表的疾患です.これらの疾患では小児を除いて腰椎麻酔下で手術が行われることが多く,執刀する新人外科医が麻酔を担当する場合も多いようです.血圧低下や呼吸抑制などの合併症も起こり得ますので,腰椎麻酔は決して簡単な麻酔ではありませんが,少し前までは外科医は皆当然のように腰椎麻酔をかけていました.近年は麻酔の危険性も認知されてきて腰椎麻酔も麻酔科専門医に依頼する傾向にありますが,深刻な麻酔医不足も影響して,最近では外科医が腰椎麻酔をかける機会が再び増えているような気もします.
現在,日本国内で脊椎麻酔に使用できる麻酔薬は数種類ありますが,多くの外科医が新人の頃に教わって,今なお使用し続けている代表的な薬剤が塩酸ジブカイン(ネオペルカミンS®)です.インターネット上で公開されている多くの施設のクリニカルパスや症例報告をみても,塩酸ジブカインが今なお広く使用されていることも確認できます.麻酔専門医や麻酔薬についての知識が深い方々からは「今さら何を言ってるの」と言われるかもしれませんが,薬剤情報を十分に知らないまま,使い慣れている塩酸ジブカインを使用し続けている外科医が多数いるのも事実のようです.わが国では塩酸ジブカインの使用が禁止されているわけではありませんので,使用すること自体に問題はありませんが,塩酸ジブカインの薬剤特性や毒性を十分に認識したうえで使用することは非常に重要なことと思います.
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