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はじめに
近代社会における肥満・超過体重人口の増加は著しく,全世界で17億人が肥満(BMI>25)の状態と考えられている1).肥満大国である米国では約2/3がBMI 25以上であり,約半数がBMI 30以上といわれている2).これら肥満人口の増加は2型糖尿病,高脂血症,高血圧,睡眠時無呼吸,心疾患,喘息,関節炎,ある種の癌,うつ病などの肥満に起因する合併症の増加をもたらしている3).これらの合併疾患により世界中で毎年250万人以上が死亡していると考えられている4).しかしながら残念なことに,食事療法に代表される内科的治療は,長期的にみれば無効に終わることが多い.また,薬物療法も現在のところ肥満患者,特に重度肥満患者に真に有効といえるものはない5,6).
1991年に米国国立衛生研究所(NIH)が病的肥満に対する外科治療のガイドラインを作成した7).NIHにより定められた手術適応はBMI 40以上,またはBMI 35以上かつ肥満に起因する合併症をもつ者とされている.アジアでは,アジア太平洋肥満外科学会(APBSS)がアジア人に対して①BMI 37以上,または②BMI 32以上で糖尿病をもつ者,あるいは肥満に起因する疾病を2つ以上もつ者,という適応を出している8).アジア人は欧米人に比して低い肥満度でも合併疾患を生じやすいため,合併疾患を治療するという観点から出された指針である.近年,わが国でも肥満患者の増加は著しく,それに伴い糖尿病などの肥満に起因する合併症も増加している9).
世界中で最も多く行われている肥満外科治療は胃バイパス術であり,腹腔鏡下胃バイパス術は最も高い対肥満効果が期待できるが,腹腔鏡下手術のなかで最も高い技術が必要とされる手術ともいわれており,手術リスクも高くなる.そのため,リスク回避のために超重症肥満などに対して腹腔鏡下袖状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy:LSG)を行うことも推奨され始めている.
今回,われわれはハイリスク肥満患者を中心にLSGを7例施行したので,その手術手技を中心に報告する.なお,当手術は当院の倫理委員会の承認を得て,十分なインフォームド・コンセントを行ったのちに施行している.
本術式の適応は,先に述べたアジア太平洋肥満外科学会(APBSS)で定められた①BMI 37以上 または②BMI 32以上で糖尿病をもつ者,あるいは肥満に起因する疾病を2つ以上もつ者という適応基準に則って行っている.
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