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ドイツ・ドレスデンの外科医ゲオルグ・ケリング(Georg Kelling:1866~1945年:図1)は1901年にハンブルグでの学会において,イヌを用いた実験に基づき「腹腔内に濾過した空気を送り込んで腹腔内を覗き見る」という新しい内視鏡検査のアイデアを発表した.ついで,翌年の1902年にミュンヘン医事週報誌(Munch Med Wochenschr 1:21-24, 1902)上に「Ueber Oesophagoskopie, Gastroskopie und Kölioskopie」と題した論文が掲載された1).このときから腹腔鏡(Kölioskopie)という言葉が医学界に登場することになった.
今日「腹腔鏡」と訳されている「laparoscopy」はスウェーデンのヤコビウス(Hans Christian Jacobaeus:1879~1937年:図2)によって名付けられたものであるが2,3),「laparo」の意味するところは「(たるんで柔らかい)脇腹」ないし「腰」である.Kellingは「おなか(腹)」を表す言葉が「koilia」であることから,「腹の中を覗き見る内視鏡」ということを表すために「Kölioskopie」(ケリオスコピー)と呼んだのである1,4).ただし,歴史的には1911年にヤコビウスが実際に人間の胸腔内疾患や腹腔内疾患の診療に臨床応用してこれを「laparoskopie=laparoscopy」と呼んで発表したことから,「ラパロスコピー」イコール「腹腔鏡」に定着していった5).ヤコビウスは主に胸部疾患の胸腔鏡的診療を推進していった医師であり6,7),ステッドマン医学大辞典においては,胸膜癒着を胸腔鏡下に電気焼灼で剝離する手術を「Jacobaeus's operation」という冠名で呼ぶと記述されている.
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