外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・47
人工肛門は後腹膜経路が標準か
高橋 孝夫
1
,
杉山 保幸
2
Takao TAKAHASHI
1
1岐阜大学医学部腫瘍外科
2帝京大学医学部附属溝口病院外科
pp.1578-1580
発行日 2007年11月20日
Published Date 2007/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101944
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わが国においては腹会陰式直腸切断術を施行する際,S状結腸を用いた永久的単孔式人工肛門を造設する場合には腸管を後腹膜経路(腹膜外経路)で誘導することが当然とされてきた.ところが,患者の体型や腸管の切除範囲,腸間膜の長さによっては後腹膜を通すのは容易ではなく,腸管のねじれや腸間膜の圧迫が問題になることがある.
わが国においては直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術あるいは人工肛門造設術に関する論文には,S状結腸永久的単孔式人工肛門を作成するとき,ほとんどといってよいほど後腹膜経路で結腸を誘導し,人工肛門を造設すると記載してある1~6).筆者らが調べ得たかぎりでは最初にこの方法を報告したのは1958年のGoligherであり,その後は欧米の教科書にも腹会陰式直腸切断術時人工肛門を造設するときには“extraperitoneal colostomy”(後腹膜経路)で造設すると記載してある7,8).筆者らも以前に指導医からS状結腸での単孔式人工肛門造設を行う場合,後腹膜経路で行うべきであるという指導を受けた.そのときの印象では,後腹膜経路で行う場合,腹膜トンネルがなかなかうまく作成できない,あるいは結腸の剝離がたくさん必要であり,手術手技が複雑で,手術経験が必要であると感じていた.また,術後ストーマ狭窄を認め,排便困難例を経験したこともあった.以上のようなことから,本稿ではこの方法が本当にgolden standardであるのかどうか検証してみる.
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