連載企画「外科学温故知新」によせて・13
医学の守護聖人:コーム・ダミアン兄弟による下肢移植伝承
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATO
1,2
1誠心会井上病院外科
2日本医史学会
pp.1575-1577
発行日 2007年11月20日
Published Date 2007/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101943
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キリスト教,特にカトリックには様々な職業,事象や地域に(ちなみに日本の守護聖人は1549年に日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルである),それぞれにゆかりのある守護聖人(patron saint)というものが定められており,これらはキリスト教徒の伝統的な信心の表れの1つである.また,キリスト教を信仰する国々では1年365日の日ごとにその日の守護聖人が定まっており,敬虔なカトリック信者は生まれた子供の誕生日の守護聖人の名をいただいてその子の洗礼名を決めることが多い.
医学・医療関係での守護聖人を数例挙げると,両側の乳房を抉られて殉教した聖アガタは乳房疾患や看護師の,殉教時の拷問で歯を抜かれた聖アポロニアは歯科医師の,医業を生業としていた福音教者聖ルカは医師(東京の聖路加病院はこれに由来する)の守護聖人である.そして,今回取り上げるのが外科医の守護聖人として信仰されている「聖コームとダミアン兄弟」であり(図1),彼らが行ったとされる下肢移植に関する逸話である.
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