外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・45
直腸保護ストマは結腸が標準か
猪股 雅史
1
,
二宮 繁生
1
,
安田 一弘
1
,
野口 剛
1
,
白石 憲男
1
,
北野 正剛
1
Masafumi INOMATA
1
1大分大学医学部第1外科
pp.1239-1241
発行日 2007年9月20日
Published Date 2007/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101827
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【直腸保護ストマとは】
直腸癌に対して低位前方切除術を行う場合,直腸切離ラインが低くなると縫合不全のリスクが増加する.特に全直腸間膜切除(total mesorectal excision:以下,TME)では血行の乏しい直腸がかなりの長さで残るため,術後に縫合不全が高率に生じる(10~20%以上)1).TMEや超低位前方切除術では術後の縫合不全を避けるため,口側腸管に一時的な直腸保護ストマ(diverting stoma,covering stoma,protective stoma)の必要性が生じてくる2).結腸の穿孔性腹膜炎に対する緊急手術においても縫合不全の発生率が高いため,直腸保護ストマの必要な場合が多い.直腸保護ストマ造設の目的は,吻合部の安静をはかり,縫合不全などの合併症を最小限に抑えることにある.したがって,初期治療における合併症の危険性がなくなり次第,安全に閉鎖され,速やかに患者の社会復帰が遂げられなくてはならない.患者のquality of life(QOL)を良好に保つために,ストマ自体の合併症は極力少なくあるべきである.
さて,この直腸保護ストマの造設は,以前は横行結腸ストマ(colostomy)が一般的に作られてきたが,最近は回腸ストマ(ileostomy)を選択する外科医も少なくない.直腸保護ストマとして,はたしてどちらがよいのだろうか?
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