プログレス
臓器移植の将来像
太田 和夫
1
1東京女子医科大学腎臓病総合医療センター
pp.191
発行日 1985年3月15日
Published Date 1985/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103285
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1.はじめに
衰えた臓器の機能を他の動物から得た臓器で代用しようという考えは古くからあり,エジプトやギリシャ,ローマの彫刻にその具象を認めることができる.
この臓器移植が近代科学の対象となり検討が加えられるようになったのは20世紀に入ってからであり,1950年代の後半になってやっと腎移植において臨床的に成功をおさめることができるようになった.
それから約30年間の歳月を経て,現在では,腎,心,肝,膵,肺などについては臨床における治療手段の一つとして,また睾丸,脾,腸,副甲状腺などについても一部では臨床応用が試みられ,今後の可能性を求めて研究が進められるようになってきた.
このように臓器移植の臨床応用が可能になったのは免疫反応を抑制する手段が開発されたことが最も大きな力となったが,その他にも多くの周辺的な医療技術が発展してきたことも大きな助けとなり,これらの総合的な治療レベルの向上によってこれが始めて可能になったものと考えられよう.
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