書評
佐々木克典(著)「外科医のための局所解剖学序説」
岡村 均
1
1神戸大・分子脳科学
pp.150-151
発行日 2007年1月20日
Published Date 2007/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101751
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本書は,日本で初めての,臨床の役に立つ本格的な「局所解剖学」の書である.臨床外科医の経験を持たれる解剖学者の著者が,臨床に役に立つ解剖学実習とは何かという疑問に正面から取り組まれた,実にオリジナルな書であり,目から鱗が落ちる記述が満載され,解剖学を学ぶ学生や教師にとっても,外科臨床に携わる医師にとっても非常に有用な本であると言える.私は,解剖学教育に長らく携わって来た者として,これから医師になるために人体解剖学実習を行っている多くの医学生に,特にこの本を推薦したい.
いったい解剖学とはどんな学問であり,解剖学実習とは何を目的にするのであろうか? 解剖学は体の形態と構造から生体の秘密を探ろうとする学問である.その手法は,見えるものすべてに名前をつけ,形を認知することから始まる.構造を明らかにするために,解剖学〔anatomia(anaすっかり,tomia切る)〕の名のごとく,外部のみではなく,内部を切り分けて研究し,名前をつける.医学部で行われる人体解剖学実習の目的は,言うまでもなく医学の基礎知識としての解剖学の取得であるが,実は,日本においては,先に述べた解剖学の本来の学問の意味の追体験として行われている.これは,何が医学的に重要かの知識を持ち合わせていない学生に対し,最初に行われる体系的な専門教育としてやむを得ない措置であるが,医学生にすれば,名前を覚えることはむやみに漢字や英単語を覚えることのように無味乾燥なものとなり,その学習意欲が削がれることが往々にある.
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