カラーグラフ 臨床病理シリーズ・7
肺および肋膜の良性腫瘍
下里 幸雄
1
,
鈴木 明
2
1国立がんセンター病理部
2国立がんセンター内科
pp.1030-1035
発行日 1972年8月20日
Published Date 1972/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205650
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肺の悪性腫瘍と鑑別すべき疾患は炎症性の病変を含めて数多いが,この中でも本邦で比較的しばしば経験する胸腔内の良性腫瘍あるいは腫瘍様の病変を2号にわたり示してみよう.今回は肺ならびに肋膜の腫瘍を選んだが,この種の病変は国立がんセンターにおける切除した肺腫瘍の約5%を占め,その大多数は"Sclerosing he-mangiomas硬化性血管腫"およびHamartomas過誤腫である.臨床的にこの2つの腫瘤は末梢発生の低分化腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌,"悪性度の低い肺癌",肉腫,転移性腫瘍などとの鑑別が問題になる.しかし,気管支造影や血管造影などにより多くの場合推定が可能である.にもかかわらず術前の確診が不可能であるから,手術に際しては腫瘤のincisional biopsyやenucleationを避け,肺の部分切除ないし区域切除による腫瘤の完全摘出,次いで迅速凍結切片診断の手順を履むことが望ましい.肺癌と鑑別すべき良性の病変として,WHO分類にはこの他にplasma cell granulomas,pseudolymphomasなどが記載されているが,これらは極めて稀である.
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