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典型的な症例
症例は30歳,女性.検診時の胸部単純X線写真正面像で,右下肺野の上部に約3cm大の円形不透過影(腫瘤影)を認めた(図a矢印).腫瘤影の辺縁は平滑,周囲肺野との境界は明瞭で,血管影の集束や連続性は認めない.内部のX線透過性は,中心部より辺縁寄りがやや良好で,明らかな石灰化影は指摘できない.CTでは,中葉に辺縁平滑,境界明瞭な腫瘤影がみられる.内部のX線吸収値は不均等で,高吸収値を示す微細石灰化が介在し,辺縁部には脂肪を示唆する低吸収域(図b矢印)も混在している.以上より,過誤腫と思われたが,増大傾向にあったため腫瘤摘出術を施行し,chondromatous hamartomaの病理診断を得た.
比較的若い成人女性にみられた増大傾向を有する,辺縁平滑,境界明瞭な円形陰影で,単純X線写真からは過誤腫,硬化性血管腫のような良性結節が考えられた.この症例のように臨床的事項や単純X線写真で,悪性より良性腫瘍を考えさせる所見(後述:「読影のポイント」参照)があるが,各所見は悪性腫瘍でもみられることがあるため,これらを組み合わせて鑑別の一助とせねばならない.また,悪性腫瘍のみならず,各良性疾患の特徴を知っておく必要がある.
良性肺腫瘍の肺腫瘍全体に占める割合は2~7%とされるが,この頻度の差は,その定義の違いによると思われる.また,腫瘍類似疾患となると,定義は曖昧で,多彩な病態,病変が含まれることにもなる.そこで,本稿では,国際保健機関(WHO)による肺・胸膜腫瘍の組織分類に基づいて,肺良性腫瘍および腫瘍類似疾患を抜粋して記載した(表1).各疾患とも稀であるため,このなかから比較的遭遇する可能性の高い疾患,結節影ないし腫瘤影を形成する疾患および特徴的な画像を呈する疾患を選び,胸部単純X線写真,X線CT像を主体に呈示し解説する.
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