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1 はじめに
本総説では新薬開発のための臨床試験(治験)に限ったものだけでなく,肺癌の治療に関し標準的治療を確立しようとしてわが国で行われた第Ⅲ相試験について概説する.臨床試験には国際的な話し合いが行われ(ICH-E8),第Ⅰ相から第Ⅳ相までが規定されており,それぞれ目的が決められてプライマリエンドポイントが設定されている.
第Ⅰ相は,開発しようとするものが薬剤であれば,その想定される最大耐用量と推奨用量を決める.つぎに,第Ⅱ相試験においてその推奨用量における探索的な有効性を検討する.一般的にプライマリエンドポイントは奏効率であり,帰無仮説は「この治療の奏効率は閾値以下である」となる.観察されたエンドポイントのカットオフ値がその閾値以下ならば帰無仮説を採択し,開発を中止する.その帰無仮説を棄却でき,期待奏効率を担保できた場合,毒性などの有害事象の発現状況やfeasibilityなど考慮し,第Ⅲ相試験に進むか否かが総合的に検討され決定される.新治療が有効である可能性が高い場合,標準治療と比較することにより新しい標準となり得るかを検証する手段が第Ⅲ相試験である.この検証のため,通常はランダム化比較試験の方法がとられる.一般に新治療が標準治療に比べて生存において優ることを検証する優越性試験の型で行われる.すなわち,臨床的仮説の「新治療がどの程度,生存において標準治療に優れば新しい標準治療となり得るか」が問われ,そこから必要症例数が算出される.
この第Ⅲ相試験を経て治療法が変わるのであるが,上記のステップを踏まえた試験はわが国では肺癌領域でいち早く行われたものの,それでも1980年代からであった.このため1990年代以降に発表された論文のうち,peer-reviewのある英文雑誌上に発表された論文を対象として概説する.
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