連載企画「外科学温故知新」によせて・4
創傷管理(1)―創傷管理に関するFlemingの論考:Flemingは創に対する消毒剤のadverse effectに言及していた!
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATOU
1,2
1北九州市立若松病院外科
2日本医史学会
pp.1094-1095
発行日 2006年8月20日
Published Date 2006/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100959
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フレミング(Alexander Fleming:1881~1955)のペニシリン(penicillin)発見に関しては多くの「セレンディピティ(serendipity)」が関与していることがよく知られている.なお,1928年にペニシリンを発見したフレミングは,ペニシリンの臨床応用の道を拓いたチェーン(E. B. Chain)とフローリー(H. Florey)とともに,1945年にノーベル生理医学賞を受賞した.
この「セレンディピティ」とは,ある仮説に基づいた研究や実験の過程で「はじめから意図してではなく,偶然に重大な発見をすること.ないしそういう才能」と定義される言葉であり,語源的には,セレンディップ(Serendipは現在のスリランカの古名)の3人の王子が,行く先々でうまい具合に数々の思いがけない幸運に巡り会いながら帰還するというお伽話に由来している.これらフレミングのペニシリン発見にまつわるセレンディピティについては他書に譲るが,これは「棚からぼた餅」的な思いがけない幸運というようなものではなく,「偶然は準備のできている人のみを助ける」ないし「観察の場では,幸運は待ち受ける人の準備状態や心構え次第である」というパスツールの言を借りるまでもなく,科学的に重要な発見につながる幸運に巡り会うには,深い専門的な知識と洞察力の裏付けが必要であるのは言うまでもない.
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