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はじめに
乳癌診療のガイドラインがインターネットなどを通じて一般国民にも公開される日が近い.ガイドラインの位置づけについて,医療の供給側と受ける側との間に理解の乖離があれば,その分,医療の現場は混乱するであろう.また,ガイドラインが法律に準ずるようなものと解釈されれば,それに則っていれば医療訴訟にならないが,ガイドラインからはずれた診療でその結果が悪ければ医療側が訴訟に負けるというシナリオが描かれてしまう.医療の充実に向けてガイドラインをフルに活用する姿勢が求められているはずの医療者であるが,医療訴訟に結びつけて考えてしまう向きもあるように見受けられる.
こうした受け身的な姿勢を医療者の側から払拭したいという願いもあって組まれたのがこの特集である.ガイドラインが世に出る直前のこの時期に,また,乳癌病態の多様性についての認識が進むなかで,読者諸氏にはガイドラインの作成姿勢を理解し,乳癌初回診療が関わる部分についての要点と,医師の裁量として許容される範囲について各筆者の本音部分を汲み取り,幅をもって乳癌診療を工夫していただきたいと思う.
さて,この序文のタイトルを「乳癌初回診療のトータルパス」とした事由はつぎの通りである.病院や医師によって格差の大きいわが国の医療を標準化するために,EBM実践を支援するガイドラインと同等に導入すべきものがクリニカルパスであり,限られた医療資源の枠を考えればパスは必需品である1).EBM実践の支援ということでパスとガイドラインとは不分離の関係にあり,よき臨床を実践するシナリオを描くには,パスの各ステップにガイドラインの要素が適切に組み入れられていることの確認が必要である.また,パスは入院だけでなく,外来や後方医療施設などの連携をも包括したトータルパスの考え方が求められる.ガイドラインを内包したトータルパスを拠り所に医療を充実させるという方向性を,ほかの分野の模範になるように医療のモデルである乳癌診療の場で確認していただきたいと願うものである.
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