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はじめに
食道胃静脈瘤に対する治療法は,つねに新しく開発された最先端技術を応用しつつ発展してきた.内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)やバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(Balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)はその代表であると言える.これらの優れた治療法が登場した結果,非手術療法に大きな注目が集まり,食道胃静脈瘤に対する外科治療はほかの治療法との併用療法として,あるいは内視鏡治療抵抗性の症例に対してのみ選択されることが多くなった1,2).
しかし,非手術療法にも問題点がないわけではなく,最近は(1)一度で確実かつ長期的な治療効果が得られる,(2)長期にわたる治療が必要な内視鏡治療に比べてコストダウンが実現できる,などの利点を有する外科的治療の役割が再評価されている.
Hassab手術は食道や胃の離断を行わず,胃周囲および食道下部の広範囲な血行遮断と脾摘を行う術式で,胃静脈瘤の標準術式とされている3).さらに,(1)門脈血行動態からみて合理的である,(2)侵襲が比較的軽度である,(3)脾機能亢進も同時に解消できる,などの利点も有しており4),食道胃静脈瘤に対する手術療法のなかでは広く行われるようになった.
しかし,本術式の対象となる症例は多くの場合,耐術能の低下した肝硬変を伴っているため,外科治療特有の侵襲を少しでも低減する工夫が望まれる.われわれは内視鏡下手術の低侵襲性に着目し,1994年から肝硬変に合併した胃静脈瘤に対し腹腔鏡下Hassab手術を行っており5,6),最近では手術手技の安定化や新しい手術機器の導入により良好な成績を収めている.
本稿では,本術式における手技および治療成績について述べる.
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