胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・3
Billroth―1881年―まで(2)
高橋 孝
1
Takashi TAKAHASHI
1
1たむら記念病院外科
pp.659-668
発行日 2006年5月20日
Published Date 2006/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100448
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【Gussenbauer,Winiwarter論文(1)―胃切除の実験】
Rokitansky剖検例の解析はGussenbauerとWiniwarterによってなされました.2人は当然Billroth門下であり,のちに前者はBillrothの跡を継いでWien大学第2外科の教授に,後者はLuttichの外科教授となりました.その結果を報告する論文1)は33頁に及ぶ膨大なものであり,副題からもわかるように,2/3はイヌを用いた胃切除の実験とその結果の考察に費やされています.そして後段に,61,287の剖検症例から903の胃癌例を抽出してこれを解析しているのです.本連載の主題である「胃癌とそのリンパ節への広がり」からは横道に逸れますが,後段への序論として,まずイヌにおける実験結果をまとめてみましょう.
当時(最初の実験は1874年2月24日)は,開腹し,幽門・十二指腸を含めて胃をリング状に切除し,吻合し,閉腹するという手技上の問題,これに付きまとう危険性についての情報は皆無でした.それまでにもいくつかのイヌを用いた実験があったとは言え,まったくの処女実験,五里霧中の試みであったと言えましょう.特に切除部分の胃の間膜を剝離すること,吻合の方法と吻合後の胃の機能に不安を抱き,ここに実験と観察の重点が置かれました.
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