連載企画「外科学温故知新」によせて・1
麻酔―「エーテル・デイ」とAnesthesia(麻酔)の語源
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATOU
1,2
1北九州市立若松病院外科
2日本医史学会
pp.670-671
発行日 2006年5月20日
Published Date 2006/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100449
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アメリカでは毎年10月16日をモートンの功績を讃えて「エーテル・デイ(Ether Day)」と呼ぶ.ちなみに,紀州名手において華岡青洲(1759~1835)が通仙散を用いて60歳の女性の乳癌の核出手術を実施したのは,西暦1804年すなわち文化元年10月13日のことであった.
1846年の10月16日に米国ボストンのマサチューセッツ総合病院において,エーテル吸入による全身麻酔下に公開外科手術が実施された.簡単にその公開手術の模様を紹介すると,患者は側頸部(顎下部とも言われている)に瘤(血管腫とされる)を生じたギルバート・アボットという小さな印刷・出版業を営む若者で,執刀医はその当時のアメリカ外科学界の大御所ジョン・コリンズ・ウォレン(John Collins Warren:1778~1856)が務めた.そしてこの時,エーテル麻酔を実施したのが27歳の歯科医ウィリアム・モートン(William Morton:1819~1868)であった.このエーテル麻酔下の公開外科手術(腫瘤摘出術)は,手術中に患者がまったく痛みを訴えることなく成功裡に終了した.そして,この公開手術の終了時には執刀したウォレンがおごそかに「これはペテンではありません」と宣言したという(なお,このエーテル麻酔下の公開手術が行われた講堂は「エーテル・ドーム」と称されて現在ボストンのマサチューセッツ総合病院の一角に残っている).
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