「脳と神経」への手紙
「微量元素製剤投与にて両側淡蒼球に異常信号域を認めた症例」について
織茂 智之
1
1関東中央病院精神内科
pp.444
発行日 2002年5月1日
Published Date 2002/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406902145
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拝啓
本誌2001年53巻8号に掲載されました松浦氏らによる「微量元素製剤投与にて両側淡蒼球に異常信号領域を認めた症例」を大変興味深く拝読させていただきました。このなかで筆者らは,微量元素製剤のエレメンミック®1Aを49日間投与された患者において,脳MRIのT1強調画像で両側淡蒼球に高信号領域が認められ,これは微量元素製剤投与による高Mn血症のためであるとし,長期中心静脈栄養を行う際には微量元素製剤の投与法を考慮すべきであるとしております。
われわれも微量元素製剤(エレメンミック®)を連日投与された患者8例において,全血中Mn濃度を測定した7例全例に高Mn血症を,脳MRIを調べた5例全例にT1強調画像で淡蒼球,被殻に高信号領域が認められたことを報告し,微量元素製剤投与時の注意を喚起致しました1)。さらに研究をすすめ,1)15日異常エレメンミック®を連日投与された12例全例に高Mn血症が認められたこと,2)脳MRIを検索した6例全例の大脳基底核にT1強調画像で高信号領域を認めたこと,3)エレメンミック®投与日数と全血中Mn濃度は強い順相関を示したこと,4)胆汁うっ滞は1例にのみ認められたことなどを報告致しました2)。このように微量元素製剤の連日投与により,胆汁うっ滞がなくても比較的短期間に全血中Mn濃度の上昇がおこり,脳にMnが沈着致します。
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