「脳と神経」への手紙
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)症例のマイコプラズマ感染について
黒木 茂一
1
1神戸市立中央市民病院小児科
pp.992
発行日 2001年10月1日
Published Date 2001/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901856
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拝啓
本誌53巻6号に掲載された長谷川先生らの論文「マイコプラズマ感染に伴う急性散在性脳脊髄炎(ADEM)」1)を興味深く拝読しました。この論文の重要な論点である,マイコプラズマ感染の診断について疑問がありますので,ご回答をよろしくお願い申し上げます。
長谷川先生らは論文の中で,寒冷凝集反応が512倍と陽性で,抗マイコプラズマ抗体価も80倍と高値であったと記載されており,これらの値でマイコプラズマ感染と診断されたと考えられます。しかし,寒冷凝集反応は伝染性単核球症,アデノウイルス感染症などで高値を示すことがあり,非特異的とされております2)。そこで,マイコプラズマ感染の確定診断のためには,培養などの細菌学的検査で感染を証明するか,抗マイコプラズマ抗体価の上昇を証明することが必要となります。抗マイコプラズマ抗体価の測定法としては,補体結合反応(CF),受身赤血球凝集反応(PHA),粒子凝集反応(PA),酵素免疫測定法(ELISA)などが使用されております。今回,抗マイコプラズマ抗体価が80倍と記載されておりますので,CF法以外の方法で測定されたと推測されます。PHA法では,一般に,最近のマイコプラズマ感染と診断するためには,ペア血清で4倍以上の上昇を示すか,1回の測定では,320倍以上の抗体価が認められる場合とされております3)。PA法でも同様です。ELISA法ではIgG,IgM,IgA抗体価を測定して評価します。
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