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今回われわれは,心不全症状を呈したTSH産生下垂体腺腫の2例を経験した。1例は42歳男性,1例は31歳男性であった。いずれも心不全症状を主訴に受診し,甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hor-mone:TSH),甲状腺ホルモンともに高値であり,画像で下垂体腫瘍を認めた。TSH産生下垂体腺腫の診断で,経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術を施行し,術後心不全は軽快した。
これらの症例において,下垂体腺腫が心不全をきたしたメカニズムは以下のように考えられた。すなわちTSH産生下垂体腺腫による甲状腺機能亢進の結果心拍出量が増加し,心臓は容量負荷の状態となった。また刺激伝導系も影響を受け,頻拍性心房細動を生じやすくなっていたものと考えられる。すなわち長期間容量負荷が持続し,心房細動による心房収縮の消失,頻脈による拡張期充満時間の短縮が加わって心不全に至ったものと推察された。
心不全と下垂体腺腫の間には一見関連が無いように思われるが,ホルモン産生腫瘍の場合,過剰なホルモンの全身への影響は常に念頭に置くべきである。TSH産生下垂体腺腫は比較的まれであるが,心不全は日常診療においてありふれた症候であり,その鑑別疾患の一つとして本疾患の存在も念頭におくべきであろう。今回の2症例は脳腫瘍と心臓疾患の関連を理解する上で極めて教訓的であり,ここに報告した。
A 42-year-old man and a 31-year-old man with congestive heart failure caused by the thyroid stimu-lating hormone (TSH) secreting pituitary adenoma were reported. Heart failure was improved after transsphenoidal resection of the pituitary adenoma in each patient.
The syndrome of inappropriate secretion of TSH causes hyperthyroidism. Thyroid hormone acts di-rectly on cardiac muscle to increase the stroke vol-ume. Hyperthyroidism itself reduces the peripheral vascular resistance and an elevated basal metabolism which is the basic physiologic change in hyperthyroid-ism dilates small vessels and reduces vascular resis-tance.
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