Japanese
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特集 免疫性神経疾患の治療の進歩
1.多発性硬化症(MS)
Multiple Sclerosis
糸山 泰人
1
Yasuto Itoyama
1
1東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経内科学分野
1Department of Neurology, Tohoku University School of Medicine
キーワード:
multiple sclerosis
,
interferon
,
copolymer-I
,
immunoglobulin therapy
Keyword:
multiple sclerosis
,
interferon
,
copolymer-I
,
immunoglobulin therapy
pp.1051-1055
発行日 2000年12月1日
Published Date 2000/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901688
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はじめに
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は若年成人に多く発症する原因不明の中枢神経系の炎症性脱髄疾患であり,大脳・小脳・脳幹・視神経・脊髄などの中枢神経組織の白質を主体に多巣性の脱髄病変が生じる。したがって,それぞれの病変に基づく様々な神経症候があらわれ(空間的多発性),またそれらの症状が再発と寛解を繰り返す(時間的多発性)神経難病である。患者の髄液にはoligoclonal bandの存在やIgGの増加があり,病理学的に脱髄病巣には血管周囲性にリンパ球やマクロファージの浸潤がみられることにより,免疫機序を介した病態と考えられている。MSが自己免疫疾患と仮定した場合には,標的抗原はミエリンやオリゴデンドログリアに存在するものと考えられるが,まだ不明である。また,脱髄の機序に関しても,感作リンパ球などの免疫担当細胞が主に関与しているのは明らかではあるが,抗体やサイトカインなどの液性因子がどの程度関与しているのかは不明である。しかし,多くの研究者の共通したMSの病因論は,「ある特定の疾患感受性を有する患者に何らかのウイルス感染などの外因が引き金となり,ミエリン蛋白に感作された細胞性免疫応答が異常に発現し,中枢神経組織に炎症性脱髄が生じているもの」とされている1)。
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