Japanese
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特集 脳腫瘍と遺伝子異常
3.脳腫瘍におけるEGF受容体遺伝子の異常
Abnormalities of the EGF Receptor Gene in Brain Tumors
渋谷 正史
1
Masabumi Shibuya
1
1東京大学医科学研究所細胞遺伝学研究部
1Department of Genetics. The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
キーワード:
brain tumor
,
glioblastoma
,
EGF receptor
,
deletion mutation
,
gene amplification
Keyword:
brain tumor
,
glioblastoma
,
EGF receptor
,
deletion mutation
,
gene amplification
pp.519-527
発行日 1998年6月1日
Published Date 1998/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901295
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はじめに
ヒトの脳腫瘍のなかで最も頻度が高く,また悪性度の高いものは膠芽腫(glioblastoma),とくに多形膠芽腫(glioblastoma multiforme)である。他の章で詳しく述べられるように,p53をはじめとする癌抑制遺伝子の不活性化がその発症に重要な役割を果たすと考えられる。しかし,膠芽腫の個体レベルでの進展に関与する遺伝子群については,まだ不明の点が多い。膠芽腫における活性化癌遺伝子の検索が行われた結果,多形膠芽腫の約3分の1の症例にEGF受容体遺伝子の異常が見い出された。さらに,われわれの解析などから,EGF受容体遺伝子の構造変化を伴う質的異常もしばしば出現することが明らかとなった。それらの質的異常を示す例は,EGF受容体のシグナル伝達全体を解析し,理解する上でも非常に有用な系を提供している。この小論では,これらの点を中心に述べ,その生物学的,臨床的意義を考察してみたい。
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