Japanese
English
総説
神経・筋疾患に対する細胞移植による実験的治療
Cell Transplantation for Neuronal and Muscular Disorders
近藤 威
1
,
玉木 紀彦
1
Takeshi Kondoh
1
,
Norihiko Tamaki
1
1神戸大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Kobe University School of Medicine
キーワード:
cell transplantation
,
Huntington's disease
,
leukodystrophy
,
muscular dystrophy
,
Parkinson's disease
Keyword:
cell transplantation
,
Huntington's disease
,
leukodystrophy
,
muscular dystrophy
,
Parkinson's disease
pp.507-515
発行日 1997年6月1日
Published Date 1997/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901117
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I.はじめに
近年,従来難治性とされたいくつかの疾患に対する細胞移植の臨床研究が盛んに行われるようになってきた(Table 1)。糖尿病に対するインシュリン分泌細胞の移植,熱傷に対する皮膚芽細胞の移植などがその代表例である。神経疾患においては,パーキンソン病,ハンチントン病,筋萎縮症,leukodystrophy,癌性疼痛などに対して,異なるアイデアで細胞移植の臨床応用が試みられている。これらの神経疾患は遺伝的因子に起因するものもあり,遺伝子レベルから最終的にアプローチされるべきものも多いと考えられるが,一方,現状では一般的な薬物療法に限界があるのも事実である。現在の細胞移植の臨床研究は,薬物療法から遺伝子レベルでの治療への過渡期の一治療として位置づけられる。細胞移植という治療法が,一般的に臨床応用されるには,解明すべき問題点を多々抱えているのは言うまでもないが,個々の臨床研究から学ぶ点は多い。特に,神経系という複雑な構造をもった臓器に,外来性の因子,神経伝達物質や正常遺伝子などを恒常的にもち込むには,細胞レベルでの移植というのが非侵襲性という点で利点があると考えられる。本稿では,細胞移植の臨床応用が試みられているいくつかの代表的な神経疾患について,その臨床報告を検討するとともに,細胞移植という新しい治療法の今後の可能性を検討する。
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