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連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ
iPS細胞を活用した筋ジストロフィーへの細胞移植治療研究
Establishment of cell therapy for the muscular dystrophy by iPS cell-technology
櫻井 英俊
1
H. Sakurai
1
1京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門
1Dept. of Clinical Application,Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University, Kyoto
キーワード:
iPS cell
,
muscular dystrophy
,
muscle stem cell
,
mesenchymal stromal cell
Keyword:
iPS cell
,
muscular dystrophy
,
muscle stem cell
,
mesenchymal stromal cell
pp.57-60
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_57
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はじめに
小児運動器難病の中でも筋原性疾患は比較的重篤な疾患が多く,筋ジストロフィーやミオパチーに分類されるさまざまな疾患がある.Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は小児発症の筋ジストロフィーではもっとも患者数が多く,かつ進行性できわめて重篤な経過をたどる.また,より発症の早い先天性筋ジストロフィーとして,日本では福山型筋ジストロフィー(FCMD)がもっとも頻度が高く,Ullrich型先天性筋ジストロフィー(UCMD)がその次の頻度となっている.DMDではステロイドが進行抑制効果のある治療薬として承認されているが,他には有効な治療法がない.近年,エクソンスキップを含む遺伝子治療が臨床応用されたが,患者では動物実験で証明されたほどの治療効果がみられていない.またアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療製剤が,臨床研究早期で高い有効性を報告しており,今後の第一選択治療法になる可能性もある.しかしAAVベクターには再投与が不可という性質がある以上,治療効果の持続性という点で懸念があり,遺伝子治療製剤の効果がなくなったときに次の治療をどうするのか,という視点でも次世代の治療法開発は必要である.
そこで,近年の革新的技術の代表格である人工多能性幹細胞(iPS細胞)1)の技術を用いて,小児発症の筋ジストロフィーに対する根治的な新規治療法として期待される細胞移植治療の研究開発が進展している.本稿では,特にDMDとUCMDに対する細胞移植治療の研究開発の現状を述べる.
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