Japanese
English
総説
Nerve Agentsの神経毒性
Neurotoxicity of Nerve Agents
森田 洋
1
Hiroshi Morita
1
1信州大学医学部第3内科
1Department of Medicine (Neurology) Shinshu University School of Medicine
キーワード:
organophosphate
,
nerve agents
,
sarin
,
GB
,
VX
Keyword:
organophosphate
,
nerve agents
,
sarin
,
GB
,
VX
pp.1129-1134
発行日 1995年12月1日
Published Date 1995/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900873
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I.はじめに
一般に毒ガス兵器と呼ばれているものには神経剤(タブン(GA),サリン(GB),VX),びらん剤(マスタードガス),窒息剤(ホスゲン),血液剤(青酸ガス)などがある。本邦では昨年来,神経剤(Nerve agents)が注目されているが,致死的な化学兵器はこのように数種類に分類されており,それぞれに症状・治療法は異なる。これらの多くは50年以上も前に開発されたものであり,製造技術・費用ともに核兵器よりも遥かに安易で安価なために「貧者の原爆」とも呼ばれている。その製造・使用は核兵器以上に国際的に禁止されており,ごく限られた範囲での使用のみが公にされている。最近では湾岸戦争に前後してイラク領土内のクルド人集落において大量殺戮が行われた際に,サリンが土壌から検出されたと報告されている1,2)。無論,日本には存在しないことになっていた物質であるが,昨年6月の松本市における事件と本年3月の東京地下鉄での事件で使用された3〜5)。筆者は松本市の事件に遭遇するまで,大多数の読者と同様に,これらの神経剤の知識はなく自殺目的の有機燐系農薬中毒者に対する診療経験があるのみであった。しかし,Medlineなどで検索すると数百件の論文が公開されている。また,そのうちのいくつかは事故によりヒトが被曝した例や,実験的にヒトに被曝実験を行った報告である6〜8)。
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