「脳と神経」への手紙
Diphenilhydantoineを投与した患者における急性小脳性運動失調とその遺残性
R. E. P. Sica
1
Andrés Villa
1
,
Tomoko Arakaki
1
1ブエノスアイレス市立ラーモス・メヒア病院
1Servicio de Neurología, Hospital J. M. Ramos Mejía
pp.921
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900847
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Diphenilhydantoine(DFH)は,てんかん患者において長期に使用した場合プルキンエ細胞の減少による小脳萎縮をもたらし,小脳性運動失調をきたす物質として知られている3)。しかしながら,急性DFH毒性は小脳症状が発現することは文献においてほとんど指摘されていない。私どもが知る限りでは,今村ら2)がこの症状に関して述べているだけである。
最近私どもは,過去数年間,他病院で,左側頭葉嚢腫のため複雑部分発作を伴いcarbamazepine,phenobarbitalそしてDFHで治療を受けていた48歳の白人男性で,発作が頻繁となったため当科に入院した患者を観察した。入院時,神経学的には異常は認められなかつた。既往歴ならびに家族歴に小脳障害はなかった。強調CT所見では左側頭葉先端に嚢腫が認められたが,後頭蓋窩組織は正常だった。DFHを1日400mg投与することにより,carbamazepineとphenobarbitalの投与量を変えることなく発作の頻度は少なくなった。しかし,高投与量の治療を始めてから1週間後,突然,四肢節並びに体幹運動失調,多方向眼振が発現した。DFHの血中濃度は44μg/ml(治療投与量レベルは10-20μg/ml)であった。それゆえDFH投与を中止し,carbamazepineのみ600mg/日(血中濃度:7μg/ml,治療投与量レベル4-10μg/ml)とした。その後,嚢腫を切除した。
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