Japanese
English
総説
ボツリヌストキシンによる神経疾患の治療
Treatment of Neurological Disorders with Botulinum Toxin
目崎 高広
1
,
梶 龍兒
2
,
木村 淳
2
Takahiro Mezaki
1
,
Ryuji Kaji
2
,
Jun Kimura
2
1松阪中央総合病院神経内科
2京都大学医学部神経内科
1Department of Neurology, Matsusaka Central General Hospital
2Department of Neurology, Kyoto University
キーワード:
botulinum toxin
,
treatment
,
dystonia
,
involuntary movement
,
movement disorder
Keyword:
botulinum toxin
,
treatment
,
dystonia
,
involuntary movement
,
movement disorder
pp.915-922
発行日 1994年10月1日
Published Date 1994/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900692
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I.はじめに
ボツリヌス毒素は,グラム陰性偏性嫌気性細菌であるClostridium botulinumにより産生される蛋白毒素であり,自然界で最も強力な毒性を有する。毒素はその抗原性によりA-G型に分類され,主としてA・B・E型毒素がヒトの食中毒の原因毒素となる。食餌性ボツリヌス中毒は本邦でもときに流行があり,「いずし」「きりこみ」による中毒のほか,近年では「辛子れんこん」による中毒があった。ボツリヌス中毒は過去の疾患ではなく,真空包装の普及により食品内で細菌が繁殖し,毒素を産生して中毒を発生する可能性がある。このほか,特殊なボツリヌス中毒として,細菌の経口摂取による乳児ボツリヌス症や,創傷部位への感染による創傷ボツリヌス症がある。なお7型のうち,毒素の比活性はA型毒素が最も強い。毒性は20gのマウス腹腔内注射によるLD 50を1単位として表示する。製剤化したA型毒素の場合,毒性はおよそ3×107(±20%)単位/mg蛋白である10)。
ボツリヌス毒素の臨床応用は,眼科医であるScottによって斜視に対して試みられたことに始まる。すなわち,毒素の麻痺作用を利用して,毒素の外眼筋への注射により外眼筋の筋緊張バランスを回復し,手術に代わる治療法として位置づけた11)。その後,ボツリヌス毒素の臨床応用は主に神経内科領域で広がり,現在では局所性ジストニーを中心とする多数の疾患で用いられている。
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