Japanese
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特集 くも膜下出血による脳血管攣縮の治療
脳血管攣縮とフリーラジカル—動脈壁mechanotransduction systemとの関連
Cerebral Vasospasm and Free Radicals : A Disorder of Mechanotransduction
浅野 孝雄
1
,
松居 徹
1
,
茂野 卓
1
,
堤 一生
1
,
永田 和哉
1
,
伊藤 正一
1
,
海津 啓之
1
,
石川 俊郎
1
,
中口 博
1
Takao Asano
1
,
Tohru Matsui
1
,
Taku Shigeno
1
,
Kazuo Tsutsumi
1
,
Kazuya Nagata
1
,
Shoichi Itoh
1
,
Hiroyuki Kaizu
1
,
Toshiro Ishikawa
1
,
Hiroshi Nakaguchi
1
1埼玉医科大学総合医療センター脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Saitama Medical Center/School
キーワード:
cerebral vasospasm
,
free radical
,
active oxygen
,
protein kinase C
,
mechanotransduction
,
myogenic response
Keyword:
cerebral vasospasm
,
free radical
,
active oxygen
,
protein kinase C
,
mechanotransduction
,
myogenic response
pp.825-838
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900531
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はじめに
くも膜下出血(SAH)後の脳血管攣縮(VS)発生に,オキシヘモグロビン(oxyHb)によって誘起される脂質過酸化が関与するという考えを我々が提唱したのは1980年のことであった2)。その後,この考えは多くの関連データによって支持され,いくつかの遊離基捕捉剤(Free radical scavenger:FRS)のVSに対する効果が,臨床レベルで検討される段階に至っている。これらの薬剤については,現在,臨床第3相試験が行われている最中であり,確定的な結果は未だ得られていないのであるが,今までの臨床治験においては,動物実験における作用を裏づける結果が示されている4,29)。一方,この十数年の間に,脳循環に関与する諸因子,および生体内におけるフリーラジカルについての知見は著しく拡大した。したがって,VS発生における脂質過酸化の意義についても,最近確立された様々な生物学的機構に照らし合わせて,新たに考え直す必要がある。脈管学における最近の知見は,脳主幹動脈壁に,血流が動脈壁に与える物理的力(内圧とshear stress)を感知して,それを局所的な平滑筋tonusの変化へと変換するシステム(mechanotrans—duction system)が存在することを示している。ここに関与する生化学的機構と,VS発生に関わる機構との間には多くの共通点が認められることから著者は,VSの本態は,フリーラジカルによって惹起された脳主幹動脈壁mechanotransduction systemの全体的な異常に他ならないという結論に到達した。本稿は,この考えについてできるだけ包括的に解説することを目的とする。
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