Japanese
English
総説
脳虚血とフリーラジカル
Cerebral Ischemia and Free Radical
浅野 孝雄
1
Takao Asano
1
1埼玉医科大学総合医療センター脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Saitama Medical Center
キーワード:
reactive oxygen species(ROS)
,
free radical(FR)
,
nitrous oxide(NO)
,
cerebral ischemia
,
apoptosis-necrosis continuum
Keyword:
reactive oxygen species(ROS)
,
free radical(FR)
,
nitrous oxide(NO)
,
cerebral ischemia
,
apoptosis-necrosis continuum
pp.201-213
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100452
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はじめに
過去半世紀の間,虚血性脳損傷発生機序と活性酸素(reactive oxygen species:ROS)についての研究は各々独自の道を辿って発展してきた。ミトコンドリアにおける活性酸素の発生が虚血による脳損傷発生に関与するという考えを最初に提唱したのはDemopoulos18),Siesjö79)らであり,その主たる機序はROS,特にハイドロキシラジカル(OH・)による膜脂質過酸化とアラキドン酸カスケード賦活にあると考えられた3)。しかし,過去20年ほどの間に分子生物学的研究が急速に発展し,また生体内フリーラジカル(free radical:FR)として一酸化窒素(nitrous oxide:NO・)が発見されたことにより,ROSは直接的に,あるいは細胞内レドックス・ステートを介して間接的に,細胞内シグナリングと遺伝子発現に大きな影響を与えることが明らかとなった。主に培養細胞を用いたin vitroの研究において,この新しいパラダイムを支持する根拠が次々と報告されている。一方,虚血性脳損傷という遥かに複雑な生体現象についての研究は未だ端緒についたばかりである。本稿で可能なことは上のパラダイムに関連する最近の知見の概略を紹介することに止まるが,FRについてより詳しく学びたい方々には次の成書,総説をお勧めしたい[Halliwell,199937);Lipton,199953);Dalton 199916);White,200087);Chan,200112)]。
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