脳神経外科診療に役立つ薬物療法の知識
脳血管攣縮に対する薬物療法
菱川 朋人
1
,
伊達 勲
1
Tomohito HISHIKAWA
1
,
Isao DATE
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経外科
1Department of Neurological Surgery, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences
キーワード:
cerebral vasospasm
,
medical treatment
,
subarachnoid hemorrhage
Keyword:
cerebral vasospasm
,
medical treatment
,
subarachnoid hemorrhage
pp.265-270
発行日 2017年3月10日
Published Date 2017/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203491
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ.はじめに
脳血管攣縮は,くも膜下腔に広がった血液によって,くも膜下出血発症から4〜14日後に惹起される脳主幹動脈の可逆的かつ数日ないし数週間にわたる持続的血管狭窄を意味する.症候性脳血管攣縮は,くも膜下出血発症から4〜14日後に,頭蓋内疾患や全身状態の悪化をはじめとする,他に原因を求めることができない脳の巣症状,麻痺,意識障害などが出現した状態で,かつ脳血管攣縮が確認された場合と定義される25).脳血管攣縮は脳血管撮影上約30〜70%に認められ,症候性脳血管攣縮は約20〜30%に認められる.くも膜下出血の死亡率は低下傾向にあるものの,死亡原因としての脳血管攣縮の占める割合は5〜6%であり,経年的に変化を認めていないのが現状である29).
脳血管攣縮の病因に関する研究は,種々の観点から盛んに行われ50年以上の歴史を有するが,いまだその全貌が解明されるに至っていない14)(Table1).病因が多様であるため,脳血管攣縮に対する根本的な治療法は存在せず,くも膜下出血発症後2週間は薬物療法,髄液管理,全身管理,血管内治療を組み合わせた対症療法を行い,脳血管攣縮を克服するしかないのが現状である.なかでも薬物療法は脳血管攣縮の治療の柱の1つであり,十分精通する必要がある.本稿では脳血管攣縮に対する薬物療法について言及している文献をレビューし,最新のトピックスを含めて解説する.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.