Japanese
English
総説
腎臓内の神経終末
Nerve Terminals in the Kidney
坂井 建雄
1
Tatsuo Sakai
1
1順天堂大学医学解剖学教室
1Department of Anatomy, School of Medicine, Juntendo University
キーワード:
kidney
,
sympathetic nerve
,
artery
,
interstitium
Keyword:
kidney
,
sympathetic nerve
,
artery
,
interstitium
pp.315-323
発行日 1993年4月1日
Published Date 1993/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900464
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腎臓の神経支配については,さまざまな方面から豊富な情報が集まっている。第1に,腎臓移植や実験的な除神経の際の腎機能変化についての観察,第2に,腎臓に入る神経の解剖とその腎臓内での分布,第3に,腎臓に入る交感神経の刺激に対する反応をみる生理学的な解析,第4に神経伝達物質に対する反応をみる薬理学的な解析といったものがある。
これらの情報は,いずれも腎臓の神経についての理解を深めてくれた。しかし,これらの知見を総合したときに,いくつかの矛盾が浮び出てくる。腎臓の神経支配が,すっきりと理解しにくい背景には,これらの矛盾あるいは謎がある。腎臓の神経支配についての謎の第1は,腎臓が豊富な交感神経を受けているにもかかわらず,除神経をしても,腎臓が正常に機能することである。腎臓病学や腎生理学の成書では,腎臓の神経支配は,しばしば無視される。謎の第2は,腎臓内の神経の分布に関することである。交感神経が動脈に沿って分布することには異論がないが,尿細管への分布については,研究者の間で評価が分れている。謎の第3は,交感神経刺激と傍糸球体装置への作用に関す)るものである。腎の交感神経刺激(あるいは伝達物質)は,動脈平滑筋を収縮させ,また傍糸球体装置の穎粒細胞からレニンを放出させるが,これらの2つの現象は,複雑に絡み合っている。動脈の収縮は,糸球体血圧を低下させて穎粒細胞からのレニン放出を促すし,放出されたレニンはアンジオテンシンIIを生成して動脈平滑筋を収縮させる。交感神経刺激の結果として観察される現象のうち,どこまでが伝達物質による直接の作用でどこからが副次的な作用なのかは,実際にはよくわからないのである。
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