慢性疼痛に対する漢方治療

Kampo Therapy for Chronic Pain

はじめに

　痛みの漢方外来には “どこに行っても治らない” や “あらゆる治療をしてきたが痛みが去らない” などと訴えて来られる患者が跡を絶たない。なかには遠方の有名大学病院の専門外来まで行った，どこそこのペインクリニック科に入院したといった病歴があって，たいていのことは試みられた末の受診である。それらの患者を治療するには，西洋医学の治療体系にはない診方でアプローチするよりないが，以下の点が重要になることが多い。

　1．寒熱の鑑別

　2．交感神経の過緊張を漢方的に見直す

　3．“気虚” の潜在に注意する

　4．神経障害性疼痛に対する漢方医学的なアプローチ

　以上の4点を中心に慢性疼痛に対する漢方治療を概説する。

　Therapy for chronic pain is not complete with Western medical method alone. Kampo therapy is useful for treatment of chronic pain. Treatment with Kampo medicine can not only compensate for the shortcomings of Western medicine, but also has power to eliminate chronic pain. In order to use Kampo medicine effectively, it is necessary to understand the way to think by Kampo medicine, which is comletely different from the Western medicine.

　This paper gives an overview of important points for treating chronic pain, demonstrating various cases.