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I.はじめに
皮膚は生体防護をはじめとして,生体の機能保持に様々な重要な役割を果している。知覚機能もその1つで,これによって生体は外界の状況を知りそれに対処することができる。その意味で皮膚は大きな「感覚器官」ということができる。
皮膚の感覚の種類とそれに対応する知覚装置はvonFrey88)以来,触覚がマイスネル小体(Meissner cor—puscle)と毛,温度覚がクラウゼ小体(Krause corpus—cle)とルフィニ小体(Ruffini corpuscle),痛覚が自由終末とされてきた。しかしこのような感覚の種類と知覚終末とを対応させる考え方は,複雑な皮膚感覚を説明するものとしてはあまりに単純化のしすぎであり,一部は誤りでもある。また鍍銀法によって同定されたこれらの知覚終末のうち,クラウゼ小体や後に述べるゴルジ・マッツォニ小体(Golgi-Mazzoni corpuscle)はその実体が明らかでなく,本来構造の異なるいろいろな小体がこれらの名前で呼ばれ,混乱を引き起こしてきた。このように従来の光顕レベルの研究では知覚小体の機能とそれに対応する構造については多くの不一致と混乱があった74)。知覚小体の形態上の分類がはっきりし,また機能と形態との対応が明らかになってきたのは,電子顕微鏡による微細構造の研究が進んだためである8,15,55,58)。電子顕微鏡によって,パチニ小体,マイスネル小体など代表的な知覚終末の細胞学的特徴が明らかにされ,さらにルフィニ小体,クラウゼ小体,ゴルジ・マッツォニ小体など,形態的にあやふやであった知覚小体が,微細構造レベルではっきり同定され,機能と対応させて分類されるようになった。例えば,von Freyによって温度感覚を伝える知覚小体とされていたルフィニ小体71)は,現在では機械受容器として確立されている7,18,56)。またメルケル終末(Merkel ending)や毛包に付属する柵状終末(palisadeending)や自由終末なども詳しく研究されてきた。
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