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慢性炎症性脱髄性多発神経障害(chronic inflam—matory demyelinating polyneuropathy, CIDP)は,急性(acute)炎症性脱髄性多発神経障害(AIDP,Guillain-Barre症候群)と並ぶ代表的な特発性後天性脱髄性ニューロパチーである。表題の後半に示したように,病理学的にはmultifocalな脱髄の散在を特徴とし,中枢神経脱髄疾患である多発性硬化症(multiplesclerosis, MS)と対比される。病因が不明なことから,CIDPとAIDPの"I"は,idiopathicに置き換えるべきとする意見もある。これまで,AIDPとCIDPの鑑別は臨床経過の違い一点からなされてきた。しかし,病変分布,病変の病理学的特徴,各種の治療に対する反応性など,両者間で異なる点は決して少なくなく,それがCIDPをAIDPとは異なる独立した疾患単位と考える有力な根拠とされてきた。
最近CIDPが急速に注目されることになったのは,①電気生理学的診断法によるmultifocal demyelina—tionの同定法がほぼ確立されたこと,②感覚障害が軽度で運動ニューロン病類似の臨床像を呈することがあり(multifocal motor neuropathy),そのような場合に抗ガングリオシド抗体の上昇する率が高いこと,③ステロイド剤以外にも各種の治療法が効果を上げつっあること,が主な理由である。また,④発症率は高くはないが,有病率は決して低くないことも重要である。本稿ではCIDP把握の現状と,最近特に注目されている多発性単神経炎型CIDP(いわゆるLewis—Sumner症候群)の位置づけについてもまとめてみることにする。
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