書評
薬物脳波学入門—山寺博史(国立精神・神経センター武蔵病院)
斎藤 正己
1
1関西医科大学精神神経科学
pp.141
発行日 1989年2月1日
Published Date 1989/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206253
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薬物脳波学は臨床薬理学の一分野といえるが,その歴史はまだ浅く,わが国ではとくに立ちおくれの目立つ新しい学問である。この分野について系統的に記述した書籍としては本書が最初のものであり,その事実だけでも注目にあたいしよう。著者は本書を入門書であるとしているが,内容的には薬物脳波学の全貌を簡潔に解説し,その将来への展望にまで言及しており,必要にして十分な知識を得るには不足しない。その意味で,この新しい学問の分野を志向する若い研究者にとっては格好の手引書といえるだろう。
薬物脳波学にとって何よりも重要な点は分析方法の選定と実験計画の策定にある。本書では,自験例を提示することによって読者にグアンファシンとブロモクリプチンの向精神作用が検討される過程を具体的に理解させようと試みている。残念なことは,ブロモクリプチンはともかく,グアンファシンは読者になじみの薄い薬物である点である。それを補う目的でItilらがミアンセリの抗うつ効果を予測し,四環系抗うつ剤として市場に送り出すきっかけを作った画期的な研究を紹介して,薬物脳波学の有用性を読者に了解し易くしている。
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