書評
—砂原 茂一(国立療養所東京病院名誉院長)—臨床医学研究序説—方法論と倫理
川上 武
1
1柳原病院
pp.540
発行日 1988年6月1日
Published Date 1988/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206117
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医科大学の新設,青年医師の増加により,医学研究も活況を呈している。それも本格的な基礎医学研究というより,臨床医の医学研究が主流なのが特徴である。そのレベルは,医学部闘争でも解体の対象となった,日本医学の構造的欠陥である"チーテル・アルバイト"に近似してきているのが現状である。本職の研究者さえも,臨床医学研究の現代的課題である,無作為化臨床試験(Randomized Clinical Trial=RCT)やInformed Consent (IC)の必要性を痛感せず,それに真剣に取り組もうと考える人が少なくなっている。
このような研究風土を苦々しく,歯がゆく思った著者は,自分達がRCTをわが国に導入してからほぼ30年目にあたる1986年に,再び初心に戻り,臨床医学の根源的な問題にたち戻って,"臨床医学研究とは何か"に挑戦しようと決意した。そして高齢と身体的不調という研究者としてはひどく不利な条件を克服し,短時日にその成果をまとめたのが本書である。著者の多年にわたる結核,リハビリテーションの臨床,研究経験に加えて,余人の追従を許さない読書量の蓄積がバックになっているので,この主題に関して,いま望みうる最高の仕事となっている。それは,高齢・身体不調も感じられないくらい,質・量ともにすぐれており,研究者に呼びかける熱い息吹きにあらわれている。
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