Japanese
English
総説
Silent area (無症候域)の症候学—臨床神経学の将来への一示唆
Silent Area and its Semiology in Human Brain: Clinical Neurology in a Future
平山 惠造
1
Keizo Hirayama
1
1千葉大学医学部神経内科
1Department of Neurology, School of Medicine, Chiba University
pp.515-524
発行日 1988年6月1日
Published Date 1988/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206113
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1.はじめに—silent areaは存在するか
ヒトの大脳にsilent areaといわれる領域がある。これに該当する日本語には直訳としての沈黙野や無言領,あるいは解釈しての無症状野などがある。しかし,筆者は後で述べるような事情から,無症候域silent regionと呼ぶのがふさわしいのではないかと考えている。この無症候域と呼ばれる領域には病変が生じても,あるいは脳外科的手術侵襲を加えても,とりたてて症候(症状symptomと徴候sign)が現われないことからこの名がある(表1参照)。しかし,ヒトの脳に機能をもたない部分があるとは考えられない。病変や侵襲によって症候が現われないとみえるのは,我々がそれを知る目をもたないために,あるいは臨床的技法をまだ見出していないために,症候は実際にはあるのにそれが我々にはみえて来ないのではなかろうか,と筆者には思われる。現実に,10年,20年と時が経つと,それ以前には知られていなかった症候が徐々に数を増しているのに気づく。このようにして脳をみると,この無症候域はまだ見出されていない題しい神経症候学を貯えている領域ではなかろうかとさえ思われる。そこで,この無症候域について,少し検討を加えようと考える。
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