Japanese
English
総説
器質性精神病の妄想,幻覚
Paranoid-hallucinatory symptoms in organic psychoses
原田 憲一
1
Ken-ichi Harada
1
1信州大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry,Faculty of Medicine,Shinshu University
pp.1251-1261
発行日 1978年12月1日
Published Date 1978/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204340
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Ⅰ.はじめに
器質性精神病の幻覚,妄想という主題を考える時,まず念頭に浮ぶのは進行麻痺のことである。
進行麻痺は梅毒性の脳病であり,痴呆がその中核症状ではあるが,妄想や幻覚を示すことが屡々である。さらに抑うつや躁状態を呈することもあり,したがつて精神医学が知つているすべての症状が生じうる。一方,進行麻痺患者の脳には一定のはつきりした病理形態学的変化がある。このことから多くの精神医学者,神経学者が,進行麻痺を精神症状と脳の器質的病変との関係を探究する絶好の対象とみなして様々の角度からこの問題をとりあげたのは当然のことであつた。進行麻痺患者がかつて非常に多かつたことと,脳のみが主として変化して体の他の器官には病変が少ないことが,一層この問題追求にふさわしかつたにちがいない。なにゆえ進行麻痺には誇大妄想が多いのか? 進行麻痺の病像は,単純痴呆型,躁型,抑うつ型,分裂病型などに分類されるが,その病型と病前性格や体型との関係はどうか? 精神症状と脳の病理形態学的変化との対応はあるか? さらに発熱療法後の病型変化として幻覚妄想状態が突発することが多いのはどうしてか? 誇大妄想が近年の進行麻痺では少なくなつてきているのは何故か? などなど,多くの問題が提起され,多くの業績が積まれた。
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