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Behavioral teratology
谷村 孝
1
Takashi Tanimura
1
1近畿大学医学部第1解剖学教室
1Department of Anatomy, Kinki University, School of Medicine
pp.510-511
発行日 1986年5月1日
Published Date 1986/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205714
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行動奇形学の概念と歴史
行動奇形学behavioral teratologyとは,行動の発達異常を研究する学問である。とりわけ,実験動物を用いて環境因子により誘発される出生児の行動異常を対象にすることが多い。行動奇形学は,形態の発生異常(先天奇形)が研究の中心であった今迄の先天異常学の拡大,すなわち従来の催奇形性から新しい発生毒性という概念の確立に伴い,機能の発生異常の一つとして重要視されてきた。日本語としてはなおなじめないところもあり,むしろ行動発生毒性学という語を提唱したい。現在,化学物質の安全性評価の立場から医薬品の生殖試験においてこのような生後の行動発達の検索を義務づけている国は,日本の他にイギリスなどがある。
行動奇形学の動物実験は形態学的異常(奇形)の誘発実験よりかなり遅れて,1940年の臭化ナトリウムによるラット児の学習能力低下の報告が最初であり,behavior-al teratologyという術語は1963年にWerboffとGottliebにより提唱された。1970年代に入って行動奇形学的研究は盛んとなった。日本先天異常学会でも,1980年に行動奇形学のシンポジウムがもたれ,その後Behavioral Teratology懇話会として毎年活発な討論がなされている。米国では1980年Behavioral Teratol-ogy Societyが設立された。
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