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はじめに
統合失調症患者において,多飲,過食,せわしない歩行,過度の喫煙,異食,奇異な身だしなみ,収集,あるいは衒奇症といった常同行為はしばしば認められる。時として,これらの常同行為は,不幸にも患者に死を招く結果をもたらすことがある。しかしながら,多飲あるいは喫煙を除いては,現在のところ,常同行為については,十分に検討されているとは言えない。そこで,Luchinsら5)は,常同行為の頻度および重症度の系統的な評価を目的に,評価尺度,Elgin Behavioral Rating Scale(EBRS)を考案した。EBRSは,Bleuler3)とArieti1)の記述をもとに選ばれた多飲,喫煙,奇異な身だしなみ,過食,収集,衒奇症,せわしない歩行,および異食の8項目に性的行動過多を加えた9項目より成る(表1)。さらに,常同行為と他の精神症状との比較を目的に,Psychiatric Symptom Assessment Scale2)よりいわゆる陽性症状・陰性症状として各4項目が選ばれ,追加されている。各項目は0~6点で採点され,1~2点は軽度,3~4点は中等度そして5~6点は重度にランクされる。EBRS原版では,常同行為9項目の各アンカー・ポイントの内容が具体的に定義されていないため,Tracyら6)により定義付けが行われている。また,EBRSの評定者間信頼性の検定では,おおむね高い信頼性が得られているものの5,6),因子分析の結果およびCronbachのα係数より,常同行為9項目の得点を単純加算した総得点をもって,常同行為の重症度とすることができるかどうかについては,検討の余地がある5,6)。
常同行為の一部は動物モデルで容易に再現されることから,常同行為の把握は,統合失調症の発現機序の解明に有益なものと考えられるため,この度我々は,原著者の許可を得た上で日本語版を作成したので,ここに紹介する。日本語訳にあたっては,原文を知らない者に日本語訳のback-translationを行わせ,この英文を原著者に確認してもらった。なお,原著者の了承を得た上で,Tracyらによる各アンカー・ポイントの定義を付記してある。また,JEBRSの信頼性,妥当性については,すでに検討されている4)。
Summary
Repetitive behavior (e.g., polydipsia, bulimia, hoarding, mannerisms) is frequently observed in schizophrenic patients and occasionally causes significant morbidity. Recently, to quantify a set of symptoms not sufficiently categorized under the terms“positive” or “negative” symptoms, Luchins et al. developed the Elgin Behavioral Rating Scale (EBRS). The EBRS utilizes a seven-point scale for rating the absence or presence of nine repetitive types of behavior in schizophrenic patients. So far, except for polydipsia or smoking, repetitive behavior in schizophrenic patients has not been fully investigated. In addition, some repetitive types of behavior are known to be able to be readily reproduced in animal models. Therefore, for better recognition of repetitive behavior in schizophrenic patients, and clarification of its mechanisms, we prepared the Japanese-language version (JEBRS).
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