Japanese
English
総説
視蓋・小脳投射系を中心とする視覚運動および聴覚運動に関する考察
Visuomotor and Audiomotor Mechanisms involving Tectocerebellar System
川村 光毅
1
Koki Kawamura
1
1岩手医科大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, School of Medicine, Iwate Medical University
pp.1149-1158
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205419
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はじめに
視覚系にしろ,聴覚系にしろ,体性感覚系にしろ,感覚入力が中枢神経系内で伝達される仕方に大別して二種類ある。一つは,認識分析系でいくつかの中継核を介したのち大脳皮質に伝達される系で,他は,脳幹内で神経回路が形成される運動反射系でこれに小脳が関連する。第一の認識系はどちらかというと新しい系で,基本的に独立した系となっており,大脳皮質内でも皮質下の中継核でも異なる感覚入力に反応する細胞は分離して存在している(たとえば視覚伝達の中継核である外側膝状体や聴覚のそれである内側膝状体など)。これに対して,運動反射機能に関連するシステムの方は古い系で,網膜から上丘に達する視覚性入力と,コルチ器官内の有毛細胞から蝸牛核,上オリーブ核などを経て下丘に達する聴覚性入力とが,さらに小脳にまで伝達される神経路を考えてみると,視覚または聴覚に反応する神経細胞群は領域的にみる限り必ずしも分離されてないことに気付く。たとえば,橋核内の背外側部,小脳虫部の中央部では両者ともほとんど同一領域内に存在する。小脳には体性感覚系や前庭系の情報が特定の部位に入ってくるが,これらの入力も運動系と密接な関係をもっている。このほかに,嗅覚性,味覚性などの入力も存在すると思われるが,嗅覚,味覚,情動などに関連する小脳の研究はこれからの分野であろう(Fig.1)。
以下に,視覚および聴覚刺激(しばしば遠隔受容刺激teleceptive impulsesというように古風な名称でまとめられる)の小脳への伝達について,この約10年間に得られたわれわれの研究成果(実験材料は主としてネコ)を中心に若干の考察を加えて総括してみたい。
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