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特集 神経科学の仮説
神経回路網形成の化学的親和性仮説
Retrospective and prospective aspects of the chemoaffinity hypothesis
藤沢 肇
1
Hajime Fujisawa
1
1京都府立医科大学第2解剖学教室
pp.182-188
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904583
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動物の完成した神経系では,形の上でも,また機能の上でも多種多様な神経細胞が見られ,これらの神経細胞は互いに組み合さってシナプス結合し,総体として高度に複雑な神経回路網(neuron network)を形成している。動物の行動がこれらの神経回路網が示す生理機能に基づいて生ずることは疑いのないところである。したがって,個体発生の過程で,あるいは傷害をうけた後の修復の過程で神経回路網がどのようにして形成されてくるのかを明らかにする試みは,単に神経系の構造の成立機構のみならず,動物の行動の発現機構をも理解する最も有効なアプローチの一つであると考えられる。今世紀の当初より現在までに,神経回路網の形成機序を明らかにするために膨大な数の実験的な解析が行われてきており,これらの実験結果に基づいていくつかの仮説ないしは理論が提出されてきている。ここでは,これら神経回路網形成の仮説のうち最も広く受け入れられて来ているSperryが1963年に提唱した化学的親和性仮説を中心にとりあげ,この仮説が提出された歴史的な背景,この仮説の検証とこれに対する反証,この仮説の現在的な意義について述べる。
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