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特集 神経心理学の現況
分離脳研究の現況
Recent Advances in Split-brain Research
杉下 守弘
1
Morihiro Sugishita
1
1東京都神経科学総合研究所・リハビリテーション研究室
1Department of Rehabilitation, Tokyo Metropolitan Institute for Neurociences
pp.35-43
発行日 1986年1月1日
Published Date 1986/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205640
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I.はじめに
1981年,カリフォルニヤ工科大学のSperry博士はノーベル医学生理学賞の栄誉に輝いた。分離脳研究についての学問的業績が評価されたのである。分離脳とは左右大脳半球を連絡する脳梁を切断された脳である。重症てんかんの治療のため分離脳となった患者についての研究は2つの点で心と脳の問題に大きな貢献をした。一つは脳梁の損傷でどのような症状が生ずるかを明らかにしたことである。もう一つは左半球だけで何ができるか,右半球だけで何ができるかを明らかにしたことである。分離脳患者では脳梁の切断によって左右大脳半球がそれぞれ独立した状態になっているのでこの種の研究が可能となった。
分離脳の研究はSperryのノーベル医学生理学賞を受賞した1981年以後も進展が著しい。SperryらはBogenらが手術したカリフォルニヤシリーズと名付けられる患者群を対象として研究したが,近年では,Wilsonが手術したダートマスシリーズや,Rayportが手術したオハイオシリーズなどについての知見が蓄積してきた。特にタートマスシリーズを研究したGazzanigaらは右半球言語機能についてSperryらと異なる説を立てるなど波乱含みでさえある。本稿は分離脳研究についての1980年以降の現況を述べてみたいと思う。
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