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AIDSはAcquired Immune Deficiency Syndromeの頭文字をとったもので,我々がこの言葉をはじめて耳にしたのは1982年9月 Washington,D.C.におけるAmerican Neurological AssociationのAnnual Meet—ingに出席した時である。この時,2つの演題4,11)によりNew York,San Francisco,Los Angeles,Miamiなどの大都市において特定のグループの人の間に通常はあまりみられない感染症が集団的に発生し,とくに中枢神経系も侵されて重篤な症状を呈することが注目をあびた。その当初"4H"といわれたHomosexual,Heroinaddict,Haitian,Hemophiliacが重要な患者群としてとりあげられた。このうちでも男性の同性愛者がほとんど多数を占めていたが,その後女性にも,AIDS男性の配偶者として発症がみられるようになり9),さらに乳幼児までも発症することが知られるようになった2)。
New YorkのMontefiore病院で我々が1982年12月に最初に経験したAIDSは極めて劇的な症例であった。この患者は32歳の女性秘書で1〜2日間の頭痛のあと全身痙攣をおこして人院してきた。左大脳頭頂葉内にenhancing avascular massが発見され,その病巣のbiopsyを行なったところtoxoplasma gondiiか光顕および電顕で確認され12),さらにtoxoplasmaに対する免疫組織化学法によっても確認された。この診断がついたあとでこの患者が3年前頸部リンパ節腫のbiopsyを受けていたことと,配偶者がヘロイン中毒でありその後発病したことも判明した。ついでこのリンパ節biopsyの標本が再検査の結果AIDSの所見に相当することもわかった10)。本症例は脳症状をおこして約1カ月後braindeathの状態となってまもなく死亡している。
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