AIDSにおける神経障害

Neurological Disorders in AIDS (acquired immune deficiency syndrome)

　後天性免疫不全症候群acquired immune defciencysyndrome（AIDS）とは，ヒト免疫不全ウイルスhumanimmunodeficiency virus（HIV）の感染による免疫不全により日和見感染や悪性腫瘍などを来した状態である。AIDSは現在人類にとって大きな脅威となっているがその理由は，1）根本的な治療法がなく死に至る病である^1），2）20-40歳の青壮年層に多く，母子感染による幼小児患者も増加しつつある^2），3）性行為や麻薬静注と関連して広がっており拡大防止が容易ではない^2），4）その結果世界のAIDS患者数は1988年7月末で108176であったものが，1989年9月末には182463と増加の一途を辿っている^3），などである。AIDSにおける神経障害は，臨床的には50〜60％に，剖検では80〜90％と高率にみられ^4〜7），患者の社会生活を障害する度合も大きく，きわめて重要な問題となっている。