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あとがき
中西 孝雄
pp.823
発行日 1984年8月1日
Published Date 1984/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205371
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- 文献概要
今やハイテク(ハイテクノロジー,先端技術)という言葉が日常茶飯に用いられているが,それは先端技術の開発が,敗戦後におけるわが国経済をGNP世界第2位まで発展せしめた要因となり,今後の経済発展のためにも是非必要だからであろう。
先端技術は,勿論学問の進歩によって開発されるわけであるが,学問の進歩をうながし,先端技術を開発するために,各国はそれぞれ独自の政策をとっている。極端な例は,他国と戦争しても負けないだけの優位な戦力を持つため,戦争のための先端技術を開発する政策である。このような政策に対しては,一部の科学者が反対運動を起こしているが,そのことにより科学が進歩し,その一部が社会に貢献することは歴史が示すところである。天気予報のための人工衛星などはその一例である。他方,わが国のように,平和を愛好し,経済発展を希望する場合には,経済発展を目指した先端技術の開発が行われる。その一例に半導体生産があるが,半導体の学問的原理は,もともと外国で明らかにされたものである。すなわち,精密性を有する国民性を生かして,わが国において高級半導体の生産が急速に伸びているということである。今や韓国でも同じような方針で半導体生産が企画されているが,学問的面から見た場合,国民の模倣性を生かした政策とも言える。先端技術そのものは,このように模倣性を生かせば推進することが可能である。いわゆる先端技術はあくまで応用された"技術"である。しかし,真に新しい先端技術を開発するためには,新しいidea—学問が必要であることは言うまでもない。
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