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あとがき
中西 孝雄
pp.201
発行日 1983年2月1日
Published Date 1983/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205080
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- 文献概要
人生50年ということは古くからよく言われているが,今や日本人の平均寿命は70歳を遥かにoverし,世界中の人々から大変羨ましがられている。嘗ては刺身などは絶対に口にしなかったアメリカ人も,刺身や寿司がお美味しいと言い,アメリカでも日本食がよく売れているという。食物が寿命に影響していることは十分考え得ることであるが,何れにしろ,寿命が延びることは,大変喜ばしいことである。人間の寿命などというものは,宇宙の歴史とまでは言わないまでも,人類の歴史に比べれば極めて短かいものであるが,20年以上も平和な時代に,より長生きすることは,大変楽しいことである。十年一昔と言うが,今の世の中における10年間の変化は甚しく,20年以上も長生きすれば,この世で色々なことをより一層経験することができる。高齢化社会になると,福祉政策上政治的には難しいかも知れないが,ゴルフ,玉突きなどを楽しんでいる高齢者を見かけると,今後も平和な世の中で長生きできることを期待したいものである。
ところで,論文の寿命はどうであろうか。人の寿命と違い,論文の寿命を計算することは不可能に近いが,昔と比べ,論文の寿命はむしろ短かくなっているのではなかろうか。世界経済は不況の中で苦しんでいるといわれるが,戦前戦後に比べれば,日本の経済は豊かだし,研究に取り組む若い人々が急速に増え,新しい研究方法を用いて,素晴しい研究成果がどんどん発表されている。そのため,嘗ては10年位生き延びた研究内容が,今や2〜3年で書きかえられる程までとなっている。
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