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あとがき
中西 孝雄
pp.1031
発行日 1978年9月1日
Published Date 1978/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204310
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7月24日のNHKニュースセンターは,1ドルが200円の大台を割つたことを大々的に報道した。今や経済界は円高でもちきりである。筆者が10年前アメリカに留学していた当時の1ドル360円に比べれば,円がいかに強くなつたかがよくわかる。当時特級酒を一升買うのに4ドルあれば十分で,筆者を楽しませてくれたものである。10年前初めてアメリカに渡つた時感じたことは,広大な土地もさることながら,商品がスーパーにあふれ,田舎の細道までがよく舗装され,人件費が高いことであつた。隣に住んでいた日本の銀行家が,「日本の経済はアメリカの10年後を歩いていると思つて対策を立てれば,ほぼ間違いない」と言つていたことが未だに耳を離れない。確かに2年有半の留学を終えて帰国した時,道路の整備が各地で進められており,10年後の今日ではスーパーに商品があふれ,人件費が驚くほど高騰している。もはやアメリカと日本の経済の差は,10年よりはぐつと縮まつた感がある。今やわが国の指導者は10年後を歩くのでなく,経済の安定と成長を計るため,世界のどの国よりも先を見通し,一歩二歩を競走しながら計画を立てなければならない所まで追いやられていると言えるのであろう。
経済の成長に伴い,公害のようなやっかいな問題も生じてくるが,喜ぶべきこともいくつかある。青少年の体格がよくなり平均寿命が世界最長国になつたことなどはその一つである。
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